1. EV用モータの制御・電磁振動連成シミュレーション技術
EV(Electric Vehicle)などモータで走る自動車は,エンジン車にはない静粛性が重要な提供価値の一つである。騒音は振動が空気中を伝わることによって発生し,振動にはモータの構造と制御に用いるインバータの性能が影響する。従来,設計段階で振動を評価する手法は確立されていなかったが,今回,モータとインバータの特性をあらかじめモデル化し,制御と連成解析して低振動化に役立てる技術を開発した。
振動の問題は,加振力(発生要素)と機械的な共振要素の2つで決まる。モータの第一の加振力は構造で決まる電磁気的成分であり,回転数に比例して増加する。第二の加振力はインバータの高周波な電流脈動がモータに流れて生じる。共振要素はモータケースや車体の機械的な共振点である。振動は従来,三次元で解析したが,計算負荷が重く制御と連成することは困難であった。
提案手法は,モータのロータとステータの間に働く電磁力を一次元の特性として表現する加振モデルを考慮し,このモデルは前述の2種の要因を含む。一次元化により計算量が軽減できたため,制御を含めた実機に近い環境でモータの振動を解析できる。
今後,振動まで対策した電動システムの設計に活用できると考えている。
(日立オートモティブシステムズ株式会社)