1. デジタルイノベーションを加速する日立のLumada
IoT(Internet of Things)の進展により,社会やビジネスが生み出すデータが加速度的に増え続けている。それらの膨大なデータはまさに新しい価値の源泉であり,日立は今,さまざまな事業領域の顧客とともに,次の社会に向けて新しい価値を創出するデジタルイノベーションに取り組んでいる。
そのために提案しているのが,「Lumada」である。これは,顧客がデジタル技術によるイノベーションをスピーディーかつ効率的に実現するため,日立が長年蓄積してきたOT(Operational Technology:制御・運用技術)とITの豊富な知見を凝縮したものであり,以下の3要素で構成されている。
- (1) 顧客・パートナーとの協創
- 顧客が事業・業務,製品・サービスを変革するためのデータ分析に基づく戦略を共に立案する。日立は,顧客との協創をすばやく効率的に行うための手法,ITツール,空間を顧客協創方法論「NEXPERIENCE」として体系化しており,この活用により,顧客の課題やビジョンを共有したうえで,そこで生まれたアイデアを仮説として構築し,プロトタイピングを通じて価値を検証することができる。
- (2) 業種・業務ノウハウ(ソリューション,ユースケース)
- 顧客のデジタルイノベーションの計画から設計,実装までを,日立の業種・業務ノウハウと過去に培った知見を活用して支援する。各ユースケースには,データからどのように価値を創り出したのか,AI(Artificial Intelligence)やアナリティクスなどにどのような技術を適用したのかといった要素が整理されており,顧客の経営課題に合わせて適切な仕組みの構築に貢献する。
- (3) プラットフォーム製品とテクノロジー(IoTプラットフォーム)
- 協創のプロセスをすばやく回していくためには,多くのステークホルダーが,より多くのアイデアやデータを持ち寄るオープンでセキュアなプラットフォームが不可欠である。日立はこれまで培ってきた知見を凝縮し,顧客が適切なデジタルイノベーションを迅速に実現するための先進的な製品とテクノロジーを提供する。
特に,(3)IoTプラットフォームは,先進的なデジタルソリューションをスピーディーに開発・実装するための基盤となるアーキテクチャであり,機器データをIoTシステムへ中継するEdge,データレイクを備えデータを蓄積するCore,データを集め加工するData Management,AIやアナリティクス技術でデータを分析するAnalytics,結果を可視化するStudio,サーバやネットワークなどIoTシステムのインフラを提供するFoundryという6つの主要レイヤで構成され,以下の4つの特長をソフトウェア基盤にもたらすものである。
- インテリジェント
機械学習や人工知能などのアナリティクス技術を利用し,深い洞察や実行につながる気づきを発見することができる。 - コンポーザブル
アウトカムの最大化に向けて実績のある日立のコア技術はもちろん,OSS(Open Source Software)やサードパーティーの技術も幅広く組み合わせて適用することができる。 - セキュア
接続する設備・機器が適正かどうかの認証や蓄積データのセキュリティ管理,アクセス管理などにより,高度なセキュリティを確保することができる。 - フレキシブル
現在稼働中の設備・機器やIT環境に合わせ,クラウドでもオンプレミスでも柔軟な形態でソリューションを提供することができる。
以下,本章では(3)IoTプラットフォームにおける事例を中心に,最近の実績・成果を紹介する。