公証サービスは,数百年にわたりデータ,特定の事実,あるいは法律関係の独立した立証を行ってきたが,公証はしばしば,契約署名や記録物の公な証明として用いられ,私的個人や企業,政府が真実を互いに共有できるよう保証している。デジタル時代に突入した現代において,この公証という概念そのものは形骸化してしまったようにも思える。とはいえ,金融機関や民間企業にとって,制度や法令などの順守がこれほど重要で複雑化したことは未だかつてなかったことも事実である。
日立はブロックチェーン技術にその解決の糸口を見い出し,デジタル公証サービスの構築と新しいビジネスの創出をめざしている。
Hyperledger*などのブロックチェーン技術は,データセットとそのデータのハッシュの両者間を結びつけ,時を経てもデータ変更がなされていないことを証明するために役立つ。あるデータがそのオリジナルデータと暗号学的ハッシュを別個に備えているとすれば,いつでも,データとそのデータのハッシュ処理の出力を比較し,データが変更されていないことを数学的に示すことができる。将来のデータのハッシュを計算することは,自動的に過去のデータのハッシュ値を取り入れ,データを長期に渡ってリンクすることとなる。
ブロックチェーンシステムのもう一つの特徴は,分散管理が可能なことである。データの保全を確実にするために,データの証明となるハッシュは複数のノードやシステムのインスタンスに即座にコピーされる。これらのノードそれぞれを異なる企業が管理できる。こういったシステムを備えるネットワークでは,さまざまな企業のデータを保管することができ,このネットワークはすべての証明を確実に保全することに役立つ。これらのハッシュはデータの証明のみを行うものであるため,デジタル公証サービスは機密であるオリジナルデータを実際に所持せずともこういった「証明」のコピーを保管することができる。
金融イノベーションラボでは,こういったシステムの開発と,独立した監査役や調整役としてこれらの公証のようなサービスを運営することの両方に,ビジネスの機会があると考えている。従来の公証サービスとは異なり,取引の詳細を現実に目にする必要なく,その取引を証明することが可能となるので,このシステムの利用者は,高度な機密性と安全性をもってデータを保持することができる。
(日立アメリカ社)