建設機械プロダクト
1. 欧州StageⅤ規制適合油圧ショベル ZAXIS-7シリーズ
ZAXIS-7シリーズは,2019年から開始された欧州新排出ガス規制(StageⅤ規制)に適合した,24 t~87 tクラスの油圧ショベルである。主な特長は,以下のとおりである。
- 環境対応
StageⅤ規制で新たに追加された排気微粒子のPN(Particle Number:粒子数)規制に適合するために,排出ガス後処理装置として,セラミックフィルタ+尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムを採用した。また,油圧システムと排出ガス,燃費の最適マッチングを実施した。 - 燃費性能の向上
さらなる燃費改善のため,現行の省エネルギー油圧システムTRIAS(トライアス)および,HIOS(ハイオス)の改良に取り組んだ。各操作に応じて制御を最適化し,作業量を確保したまま操作性を維持しつつ,燃費を大幅に改善した。ZAXIS-6比で6~20%の燃費低減を実現している。 - 居住性の向上
大型ワイパによる視界性の向上,コンソール一体型サスペンションシートや大型モニタの採用,スイッチレイアウト変更などにより,居住性を大幅に向上させた。
(日立建機株式会社)
2. 自律型建設機械プラットフォーム「ZCORE」
人と機械が協調し,施工現場全体の安全性と生産性の向上を図る協調安全と,高度な自律運転の両立を実現する協調型建設機械の核となるシステムプラットフォーム「ZCORE」(ズィーコア)を開発した。
建設業においては,生産労働人口の減少,熟練技能者の高齢化を背景として,省人化による生産性の向上が課題となっている。その解決策の一つとして,自律運転する建設機械の開発に期待が寄せられているが,機械の周囲で働く人々の安全性も確保する必要がある。
従来の建設機械では,オペレータが施工現場の状況を「認識・判断」し,安全面に配慮しながら施工を「実行」している。ZCOREは,機械システムが「認識・判断・実行」できるようにしたもので,そのために必要なセンサーや情報システムを容易に実装し,協調安全と高度な自律運転を両立できるようにしている。また,汎用のセンサーに対応できるようにインタフェースを共通化し,ユーザーの要望に合わせて容易に機能拡張,カスタマイズできるようにしている。
今後,油圧ショベル,ホイールローダ,ダンプトラックなど,日立建機株式会社が開発する自律型建設機械にZCOREを適用していく予定である。
(日立建機株式会社)
3. マイニングショベル EX2600-7/EX5600-7
従来機に対して省燃費性,信頼性,安全性,操作性,整備性,居住性の改善を加え,仕向地別の排ガス規制に応じたエンジンを選択可能にした,EX2600-7/EX5600-7の2機種を発売した。主な特長は以下のとおりである。
- 省燃費化
メインポンプ電子レギュレータ制御による油圧リリーフ時の吐出流量カット,放熱器サイズアップによるファン回転数の低減,ブーム下げ流量再生回路追加 - 信頼性向上
本体とフロントアタッチメント間の油圧ホースの取り回し変更により揺動角度を縮小,自動給脂装置の大容量化,スリットレスコルゲート電気ハーネス採用 - 安全性向上
車体傾斜・旋回状態表示により転倒や誤操作を防止,緊急時の避難装置改善,格納式階段・エンジン停止地上操作スイッチの設置 - 操作性向上
シリンダストロークエンド時のスピード減速制御による衝撃緩和で操作時の疲労軽減 - 整備性向上
整備中のエンジン誤始動を防止するスタータディスコネクトスイッチの追加,エンジンオイルパン大容量化により従来の別置きリザーブタンクを廃止して同等のエンジンオイル更油間隔の実現 - 居住性向上
メインモニタの視認性改善,遮光ロールスクリーン設置,エアコン性能向上 - 仕向地別の排ガス規制対応
北米EPA(Environmental Protection Agency:環境保護庁)排ガス4次規制/欧州StageⅤ排ガス規制適合エンジンと規制対象外の地域向け省燃費仕様エンジンを選択可能
(日立建機株式会社)
(発売時期:2019年4月)
4. 定量的なデータによる溶接作業の見える化
溶接の品質確保には,電流・電圧の設定によりアークを適切に調整し,溶接部の状態を見極めてトーチを適正に動かす技能の習得が要求される。一方で,熟練技能者の減少に伴い,建設機械の溶接に特有なノウハウを含む技能の効果的な伝承が課題となっている。
そこで,技能者の作業をカメラやモーションキャプチャなどにより測定し,定量的なデータで見える化する計測技術を開発した。これを用いて,熟練技能者データと溶接品質との相関から導かれた適正な溶接作業条件と,訓練者の作業を比較できる訓練システムの開発に向けた実証実験を開始した。訓練者は視覚的かつ定量的な情報を基に自身の改善点を把握でき,教官はデータに基づいた具体的な指導ができるようになる。双方が同じイメージを共有したうえで効果的な訓練を可能とすることで,習得レベルの個人差解消をめざす。
将来的には,海外を含む各製造拠点の技能訓練カリキュラムに本システムを取り入れ,人財育成のさらなる充実を図る。
(日立建機株式会社)
5. 稼働音・測定データから建機状態を診断する「ConSite Health Check」
建設機械業界において,生産性の向上とライフサイクルコスト低減が大きな関心事となっている。したがって保守サービスの観点では,機械を壊れないように整備することに加え,最適なタイミングで修理することが重要となっている。
一方で建設技能労働者の激減,後継者不足により高度な診断ができるサービス技術者の確保が難しく,育成にも時間を要するという深刻な社会問題にどう取り組むかが問われている。
そこでConSite開発部では,サービス技術者の高度な診断方法に着目し,ConSite Health Checkアプリとしてノウハウをツール化することで上述の課題を解決する。
- インジェクタ診断
インジェクタは,エンジン内部において燃料を霧状に噴霧し動力を生み出す重要部品である。インジェクタの爆発燃焼音をスマートフォンのマイクで捉え,噴射不良を捉える。 - 油圧ポンプ診断
油圧ポンプは油圧エネルギーを得るための重要部品である。車体から得られるセンサー情報を独自ロジックで計算し,ポンプ内部の摩耗による内部リーク不具合を捉える。
(日立建機株式会社)
(サービス提供開始時期:2020年3月)
6. 鉱山機械をリアルタイム監視する「ConSite Mine」
鉱山機械を24時間遠隔監視し,稼働状況分析結果をウェブブラウザ上などのダッシュボードに表示することで,鉱山現場の課題解決に貢献するConSite Mineを開発中である。主な特長は以下のとおりである。
- ライフサイクルコスト低減
超大型油圧ショベルのブーム,アームの溶接構造物損傷予測,油圧ポンプの異常検知,作動油の性状監視などの技術を採用し,重大破損事故を未然に防止し,安定した稼働を維持するとともに,ダウンタイムの抑制に貢献する。また,メンテナンスや部品交換時期を最適化することで,ライフサイクルコストの低減に貢献する。 - 安全性・生産性向上
事故発生につながりうる危険操作や非効率な操作をリアルタイムでダッシュボードに表示し,鉱山現場の環境整備,オペレータへの教育を通して安全性・生産性の向上に貢献する。 - 環境負荷低減
ダッシュボードにより顧客・現場特有の稼働状況を把握し,エンジンアイドル回転数やアクセル操作時の加速性能を最適チューニングすることで燃料消費量の低減に貢献する。
(日立建機株式会社)