2022 Vol.104 No.2 Measurement Technologies for Creating New Value with DX社会イノベーションを支えるデジタル計測ソリューション
Society 5.0で提唱される超スマート社会の実現に向け,サイバースペースを活用して課題を解決するアプリケーションの強化や,フィジカルスペースにおけるミッションクリティカルなシステムを実現する機器の運用制御技術の進化が求められている。これらを実現するうえで欠かすことができないのが,環境・社会・人間などの実態をリアルタイムかつ科学的に把握する計測技術である。
本特集では,生活の安心・安全や社会インフラのレジリエンス確保,工業製品の製造品質確保やサーキュラーエコノミーの実現などの観点から,最新の計測テクノロジーを駆使した日立のソリューションや研究開発の成果を紹介する。
Cover Story
社会課題の解決へ,ともに挑む
イノベーション・エコシステムの形成と産業を支える計測技術の強化
気候変動や少子高齢化,新興感染症のパンデミックなど,今日の社会は複雑化・大規模化するさまざまな課題に直面している。こうした社会課題の解決に向けては,産業界のマインドセットの転換とイノベーションが不可欠である。
デジタルトランスフォーメーションの潮流が加速する中で,企業の事業開発・研究開発はどうあるべきか。課題解決に資するイノベーション創出,産業の基盤となる計測技術の発展に必要なものとは。産業技術総合研究所理事長の石村和彦氏が語る。
「見る・測る・分析する」から始まる社会・産業・生活のDX
最先端分野での飛躍と成長を支援する計測技術
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け,多くの企業が事業を継続するうえで多大な影響を受けている。VUCAとも言われる予測不能な今日のビジネス環境においては,現状を正確に把握するための計測技術が必要不可欠である。
世界が直面するさまざまな社会課題解決の解決に向け,日立グループとしてどんな価値を提供していくのか。また,日立グループのライフ分野をリードする中核企業であり,専門分野で世界シェアの高い製品を提供する株式会社日立ハイテクの製品と,その強みとは。同社の代表取締役・取締役社長を務める飯泉孝が語った。
デジタル&クリーンで成長し続ける工場へ
脱炭素化の先を見据えたマリンサイトの挑戦
気候変動の深刻化に伴い,モノづくり企業は革新的な製品やサービスに加えて,製造過程などで排出されるCO2の低減を求められている。
株式会社日立ハイテクは,2030年度までの事業所におけるカーボンニュートラル達成を目標に盛り込んだ「日立環境イノベーション2050」に対し,新工場「マリンサイト」を起点としてバリューチェーン全体の脱炭素化に向けた取り組みを推進している。スマート工場の現状と未来について,日立グループのキーパーソン5名に話を聞いた。
GLOBAL INNOVATION REPORT
未来社会に貢献するフォトニック集積回路技術
最新の技術潮流とVLC Photonics S.L.(スペイン)の取り組み
過去数十年にわたり,IC(集積回路)はさまざまな市場で何百万という機器に組み込まれ,世界に革命的な変化をもたらしてきた。そして現在,光学素子を低コストかつ大量に集積し,小型化できるPIC(フォトニック集積回路)の可能性が,新たな革命をもたらそうとしている。ここでは,PIC技術の概要と,それによる現代および未来の社会への貢献,PICの普及・適用面で市場をリードする株式会社日立ハイテクのサービスについて述べる。
FEATURED ARTICLES
QoLを向上するヘルスケア分野の計測技術
近年,暮らしと健康を取り巻く環境が大きく変化しつつある中で,ヘルスケア分野における計測技術の重要性がますます高まっている。
ここでは,高機能・高効率な検査・分析装置の開発,微生物検査装置,走査電子顕微鏡といった医療現場の高度化・効率化に貢献する製品のほか,デジタルバイオマーカーを活用した健康増進・疾病予防などのソリューションを紹介する。
循環型社会を実現する工業分野の計測技術
気候変動が大きな社会課題となる中,産業の現場においても,消費電力の低減や歩留まり向上による廃棄物削減など,環境に配慮した効率的な運用が求められている。
ここでは,リチウムイオン電池の製造歩留まり向上・劣化予測,スマートファクトリーにおける3D形状計測のほか,プラントの経年変化の影響を推定する予兆診断,高機能材料の効率的な開発に貢献するChemicals Informaticsについて紹介する。
持続可能な環境とインフラのための計測技術
時々刻々と変化する環境への対応が求められる産業の現場においては,現状を正確に把握するための計測技術が不可欠である。
ここでは,安心・安全な鉄道の運行を支える検測装置・システムや,老朽化インフラの効率的な保守に寄与する水道管の遠隔監視・漏水検知サービス,福島第一原子力発電所の廃炉に向けた調査ロボット,環境規制物質の簡易・迅速検査ソリューションといった技術やソリューションについて紹介する。