2010年3月に故 外村彰氏が立ち上げられた最先端研究開発支援(FIRST)プログラムの原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡が昨年完成した。東日本大震災をはじめ数々の困難を乗り越え,外村氏の遺志は,日立内で長我部信行氏,品田博之氏に引き継がれ,原子分解能機能と電磁場可視化機能とを合わせもつ1.2 MVの超高圧電子顕微鏡がついに誕生した。日本を中心に,これまでも超高圧電子顕微鏡は何台も建設されてきたが,極めて高い電圧の安定性を実現し,収差補正機能も導入し,電子波干渉機能を実現した超高圧のホログラフィー電子顕微鏡の誕生は世界初であり,心よりお祝いを申し上げる。自然界に存在する4つの基本的な力(強い力,弱い力,電磁気力そして重力)の中で,我々の身近な現象,特にナノからミクロの世界の相互作用の殆どは電磁気力によって生み出されている。この電磁気力の源は電磁場であり,その電磁場を世界最高の分解能で可視化し,世界に向け発信することは,技術立国日本が今後も科学技術の分野で世界を先導して行く上で,極めて意義深い。