電子顕微鏡では,電子レンズが持つ球面収差により,分解能向上が長らく阻まれてきた。1990年代中盤にようやく,この球面収差を補正する装置が開発された。しかし,高加速電圧なSTEM・TEMへの搭載には多くの技術課題があった。日立製作所・日立ハイテクノロジーズでは,球面収差補正器の実用化開発を進めるCEOS社と共同で,球面収差補正器を搭載した200 kV STEM,300 kV TEMを開発し,分解能の大幅な向上を実現した。さらに1.2MV原子分解能・ホログラフィー電子顕微鏡への搭載にも成功し,世界最高分解能の達成に大きく貢献した。これらの開発では,高電圧・超高電圧に対応した球面収差補正器の開発とともに,電子顕微鏡本体も安定性を大幅に高める必要があり,緊密な協力体制により,技術課題を一つ一つ解決していった。
本稿では,CEOS社を創設し,球面収差補正器の開発を率いてきたMax. Haider氏に,CEOS社と日立製作所・日立ハイテクノロジーズとの共同開発を総括していただいた。