新しい倫理を創る
物理学と脳科学の視座から,「物質」(エネルギー)と「情報」(エントロピー)で構成される自然界を俯瞰し,今後のイノベーションを実現させる鍵を探る。特に,自然界に住む人間に焦点を当て,言語・記号を獲得した現生人類が,進化史において,さらに未来を切り開く可能性に言及する。
脳科学を基調とした新たな知能の形成,人工的な幹細胞技術による生命の製造,遺伝子編集により設計された人間など,その実現の可能性が直近に迫った科学技術は過去にない意味を持つ。すなわち人間は,今,生命進化の特異点に立っているのである。
この視座から,科学技術や企業の在り方に必須な倫理の意味を考える。同時に,企業における研究開発の在り方も吟味してみたい。最後に,日立グループ黎明期の志の意義を再度捉え直してみる。そして,今,最も重要なのが新たな倫理の確立であることを提言したい。