不確実性の時代と言われる今日、お客様の課題を起点とし、ともに仮説を立てて市場の反応を探りながら臨機応変に方向転換を図る研究開発のあり方が求められています。そうしたニーズに応えるため、「顧客協創」、「技術革新」、「基礎探索」という3つの軸で刷新した日立の研究開発体制が始動して2年目、すでに成果も出始めました。本特集では、最近の研究開発の成果や顧客協創によるソリューション事例を紹介します。
日立グループは,2015年に研究開発体制を刷新し,研究者が顧客とともに課題を探り,ソリューションを協創する,顧客起点の研究開発へと舵を切った。
デジタライゼーションの波がビジネスや社会のあり方を大きく転換しようとしている今日,顧客や社会が抱えるさまざまな課題を解決していくためには,これまでの延長線上にない,新しい発想とイノベーションが求められている。
それらを生み出すために必要なものは何か――。
英国でも歴史あるテクノロジーコンサルティング企業として,数々のイノベーションを支援してきたケンブリッジコンサルタンツのCEO,アラン・リチャードソン氏を迎え,全世界約2,700名の研究開発グループを率いる鈴木教洋と語り合った。
今日は不確実性の時代と言われるように,研究所で技術を開発し,事業部で製品化してお客様へ届けるというかつてのリニアモデルは,もはや通用しなくなってきています。研究開発においてもお客様の課題を起点とする独自の「デザイン思考」を取り入れ,新しい着眼や発想を生み出していくこと,そしてお客様とともに仮説を立て,実際に製品やサービスのプロトタイプを作り市場の反応を探りながら,臨機応変に方向転換を図るピボッティングにより,素早くイノベーションを推進していくことが強く求められています。
日立グループは,グローバルでの社会イノベーション事業拡大を進めている。
社会イノベーション事業とは,顧客と課題を共有し,日立グループが持つ技術,プロダクト,サービス,人材などの経営リソースを総動員して顧客と共にイノベーションを起こし,その課題に対するソリューションを提供する事業と言える。
小泉 英明
物理学と脳科学の視座から,「物質」(エネルギー)と「情報」(エントロピー)で構成される自然界を俯瞰し,今後のイノベーションを実現させる鍵を探る。特に,自然界に住む人間に焦点を当て,言語・記号を獲得した現生人類が,進化史において,さらに未来を切り開く可能性に言及する。