1.IoTシステムを支えるIoTプラットフォームLumadaのアーキテクチャ
ITの進展により,さまざまな機器をネットワークに接続し,機器から収集した情報を活用するIoT (Internet of Things)が注目を浴びている。IoTシステムの活用により,企業は自社が持つ情報を機器を通じて新たに得た各種情報と組み合せることができ,これによってビジネス革新の可能性が広がる。そのため,企業経営者もIoTに着目している。
IoTシステムでは各種機器との接続が必要であるが,機器によってさまざまな通信方式が存在しており,特定の方式に統一することは難しい。そのため,多様な通信方式での機器接続が課題となっている。また,IoTを導入する企業は,IoTによって自社のビジネスにどのようなイノベーションを起こせるか,試行錯誤しながら見極めようとするため,短期間に低コストでプロトタイプを作ることが求められる。さらに,IoTシステムでは企業の競争力の源泉となる情報を扱うケースが多く,本稼働のシステムではデータを社外に出すことに抵抗を感じる企業も多い。
日立では,こうしたIoTシステムを迅速に効率よく開発するため,共通機能をIoTプラットフォームLumadaとして提供している。日立はIoTに必要な共通機能を「Edge」「Core」「Analytics」「Studio」「Foundry」の5つに分類している(図1-1参照)。
「Edge」は機器データをIoTシステムへ中継する機能群であり,通常ゲートウェイという形で機器の近隣に実装される。データのフィルタリングや分析といった,ゲートウェイ上でのデータ処理なども含まれる。
「Core」は機器データを収集・蓄積する機能群である。データを蓄積するデータレイクのほか,機器の管理機能も含む。機器管理としては,接続されている機器の個体管理に加えて,機器データの属性の体系的な管理,デジタル上での機器のモデル化が必要である。日立ではIoTシステムに接続された機器のデジタルモデルをアセットアバターと呼んでいる。
「Analytics」は収集したデータを分析するための機能群である。人工知能(AI:Artificial Intelligence)を含む分析機能のほか,機器や各種ITシステムからの情報を融合し,分析に適したデータセットを生成する機能も含む。
「Studio」はアプリケーションのダッシュボードやアプリケーション開発環境など,エンドユーザーや開発者向けのユーザーインタフェースに関連する機能群である。
最後に,「Foundry」はIoTシステムを支えるサーバ,ネットワーク機能を示す。
Lumadaでは「Composable」「Portable」という2つのコンセプトに基づき,共通機能を用意している。
「Composable」は,顧客のニーズに合った機能を組み合せてIoTシステムを構築可能であることを意味する。例えば,機器からのデータ収集を行うOTデータ収集基盤では,自社がサポートする通信方式のほか,PTC*のThingWorx*/Axeda*やMQTTなども利用可能とすることで,接続可能な機器の幅を広げている。他の機能群に関しても複数の選択肢から必要に応じた部品を選択可能である(図1-2参照)。
「Portable」は,システムの移行が可能であることを意味している。PoC(Proof of Concept)フェーズにクラウドで開発したIoTシステムをオンプレミスで本稼働したいというニーズに応えるため,日立はLumadaのオンプレミスでの提供にも対応している。
また,短期間でIoTシステムのPoCを実施したいという顧客ニーズに応えるため,GUI(Graphical User Interface)ベースで機能ブロックをつなげることによりプログラムを開発できるNode-REDベースのアプリケーション開発環境を「Studio」の一機能として提供している(図1-3参照)。
これによりIoTプラットフォームLumadaとして提供される各種機能を簡単に組み合わせ,ビジネスイノベーションを起こすIoTシステムを,顧客と共に試行錯誤しながら協創することができる。