2020 Vol.102 No.4 Technologies to Achieve Smarter Mobility安全で快適な移動と都市空間の実現
地球環境を取り巻くさまざまな社会課題が顕在化する中,経済活動と環境保全の両立をめざす取り組みが広がっており,少ないCO2排出量で都市間を結ぶ鉄道,高層化するビル内の移動を担う昇降機は,人々の暮らしになくてはならない存在となっている。
本特集では,IoTやデジタル技術の活用によりさらなるサービス向上とスマート化を実現する日立の鉄道システムおよびビルシステムの最新の動向と開発事例,ニューノーマル時代にも対応するソリューションなどを紹介する。
Cover Story
社会課題の解決でグローバルな成長を牽引する日立グループのモビリティ事業の戦略と展望
国連が掲げるSDGsの達成期限である2030年まで10年足らずとなった今,グローバル企業の多くはSDGsを自社の経営の根幹に据え,事業戦略の抜本的な見直しを図っている。
人と社会と調和するデザインの創造経験価値を生み出すデザインで快適な移動を実現
日立は人々のQoL向上と社会の持続的発展をめざし,協創を通じて社会課題の解決を図る社会イノベーション事業を推進している。東京社会イノベーション協創センタでは,プロダクトデザイン,サービスデザイン,ビジョンデザインの三つを基盤に,利用者の満足感などの経験価値を取り込む「エクスペリエンスデザイン」の観点からデザイン活動に取り組んでいる。
ここでは海外で活躍する鉄道車両や,スマートビルを実現する昇降機システムを例に,デザインコンセプトや今後の展望などについて,それぞれのプロジェクトに携わったデザイナーと設計担当者に話を聞いた。
QoLを高めるビル空間の創造をめざしてデジタル技術の活用とスマートビルの展望
経済成長や都市化の進行に伴い,ビルはビジネスや居住,消費やエンターテインメントの場として発展してきた。2050年には世界人口の約7割が都市に暮らすようになると試算され,昇降機やビルシステムの需要は今後ますます高まると予想される。
また気候変動や少子高齢化,新型コロナウイルスの感染拡大など,世界は新たな社会課題に直面している。これからのビルのあるべき姿,またグローバル社会に提供できる価値とはどのようなものか。事業と研究開発それぞれの部門のキーパーソンがビルシステムの未来を展望する。
GLOBAL INNOVATION REPORT
多様な乗客に配慮した交通ソリューションの実現へ
日立の取り組みとインクルーシブデザインの活用
鉄道事業において最も重要なステークホルダーは乗客である。より多くの人々が安全かつ快適に利用できる鉄道車両やサービスをデザインするには,エンドユーザーである乗客の視点が欠かせない。少子高齢化などの社会背景に伴って,乗客の多様性は絶えず変化し続けている。こうした中,ハンディキャップを抱えた人々を含めた乗客のさまざまなニーズに応えるべく,日立はモビリティソリューションに「インクルーシブデザイン」の手法を取り入れることで,人々が利用する製品やサービスの価値を高め,社会への貢献につなげようとしている。
FEATURED ARTICLES
デジタル技術で進化する鉄道システム
気候変動に伴う自然災害の激甚化をはじめ,地球温暖化の影響が世界各地で顕在化する中,環境負荷が少なく輸送効率の高い交通手段として,鉄道の需要が拡大している。
1921年からおよそ100年にわたり,日立は鉄道に関わるさまざまな製品やサービスを送り出してきた。ここでは,最新のデジタル技術によって安全・安心な移動を支え続ける日立の鉄道システムと,鉄道の旅をより快適にする車両やサービスについて紹介する。
人・都市・社会の価値を高めるビルシステム
新興国を中心に増え続ける世界の人口は2050年には97億人に達し,そのうち都市人口は68%に上ると予測されている。一方,少子高齢化が社会問題となっている先進国においても,ビル内の移動を支える昇降機は人々の生活に欠かせない存在である。
ここでは,日立の昇降機と関連システムに加え,新型コロナウイルスの感染拡大を受けた新しい生活様式に合わせたタッチレスソリューションなど,最新の技術と取り組みを紹介する。