持続可能な社会をめざし,社会課題解決に向けた取り組みが世界中で加速している。その中心となるのはデジタル技術の活用であり,日本でもSociety 5.0が掲げられ,価値創造のためのイノベーションスタイルがさまざまな形で展開している。多様化・複雑化する社会課題の把握と迅速な価値創出に向けて,一層重要となるのはステークホルダーとの協創であり,日立も中央研究所内に新たに「協創の森」と名付けたオープン協創拠点を新設し,活動を加速している。本号では,オープン協創による価値創出に向けた日立のグローバルR&Dの取り組みを紹介する。
研究開発グループは,持続可能な未来社会の構築と日立グループのめざす姿を,どのように支えていくのか。新設したオープン協創拠点「協創の森」への期待と,未来社会を拓く研究開発の在り方も併せ,鈴木教洋執行役常務 研究開発グループ長が語る。
国連のSDGsや日本政府が掲げるSociety 5.0がめざす未来社会の実現には,AIの活用を核としたデジタライゼーションによる産業や社会システムの変革が不可欠である。産業界のAI有識者として世界的に知られるMark Minevich氏を迎え,今後のあるべき社会とAI活用の可能性を展望する。
日立は,2018年4月に第四次産業革命センターとパートナーシップを締結して以来,日立の持つ技術やその実装での経験を生かし,センターの活動へフェローとして貢献している。ここでは,センターの活動を紹介しながら,日立としての本センターでの取り組みについて紹介する。
社会イノベーション協創センタは,新サービスやビジネスモデルの創造を担う研究開発のフロント部隊として,ワールドワイドな顧客協創活動を通じて,各地域の注力分野の協創を実践してきた。これからのデジタル時代のイノベーション創生に向けて,顧客と共に社会・産業の課題解決に取り組み,顧客の成長に貢献していく。
デジタル化の進展に伴い,データ資本主義が台頭するなど産業構造がグローバルに大きく変化している。このような潮流の中,グローバルリーダーをめざす日立は,成長領域における新たな価値を起点にしたグローバルNo.1技術の創生を推進している。
基礎研究センタは,「社会課題解決型研究で,人間中心の価値創出と世界へのコンセプト発信」をミッションとし,不確実な時代において将来社会の在るべき姿を描き,その実現にオープンイノベーションで挑戦している。
国民の共有財産であるレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)の膨大なデータを1), 便利かつ適切に利活用できるようにすることは社会的な使命と言えるが,世界最大級のNDBデータを簡単・高速・精緻に解析可能とするのは容易なことではない。
日立は,一般財団法人 医療経済研究・社会保険福祉協会 医療経済研究機構(医療経済研究機構)および東京大学生産技術研究所(東大生研)とのオープンイノベーションにより,NDBデータから新たなエビデンス創出を支援する次世代NDBデータ研究基盤SFINCSを開発した。
本稿では,SFINCSを将来にわたって活用され続けるシステムにするために日立が実施した三つの取り組みと,医療経済研究機構の研究プロジェクトによるNDBデータの利活用成果について述べる。